2010年09月29日

【尖閣諸島事件】日本政府は、領土問題は存在すると言う立場に立つべきだ。(追記あり)

  昨日書くつもりだった記事だが、さっそくさぼってしまった。まぁ、情勢に変化は無いので、同様の記事を書く。

 さて、尖閣諸島で起きた、中国の漁船と日本の海上保安庁の巡視船との衝突事件。この事件についての私の見解を述べてみたい。
 まず、日本は、「日中間に領土問題は存在せず」と言う立場に立つ。何と、先年のチベット争乱の時には中国政府への批判が鈍りがちだった、日本共産党でさえ、「尖閣諸島は日本固有の領土」という姿勢を採り、野党各党は、中国人船長を沖縄地検の判断で釈放したことを批判する形で、臨時国会の争点にすると息巻いている。降ってわいたような事件をいきなり国会の争点、倒閣活動の目玉にしようとは、いかに自民に代表される野党が国民のことを考えず、今巻き起こっている反中感情に乗った、ポピュリズムで政治をやろうとしているかが良くわかる。

 確かに、尖閣諸島については、漁場以外には何の役にも立たない無人島の群れとして、戦後長く日本が江戸時代以来の琉球王国支配の延長上で、領有権を持ってきた。中国が関心を持ち、領有権問題とし始めたのは、海底に膨大な天然ガス資源が見つかってからであり、この点では、中国の自国の都合で言いがかりをつけてきていると言う図式が成り立つ。

 しかし、今現在、互いに貿易相手国として第1位。数年前の数字だが、日本が11兆円、中国が8兆円以上の物を相手国から買っている。日本の輸入超過だが、それは食料品の多くを中国に依存しているためである。
 このような状況下で、この事件が起きるなり、日中開戦論を叫んだ一部ネットユーザーの短絡的思考には呆れるしかないが、さらに、この事件自体が、アメリカが仕組んだ陰謀、とのたもう複数のブログについては、呆れるを通り越して、もはや脳の病気ではないかとすら思う。

 そもそも、尖閣諸島での中国漁船の拿捕は、これまでにもたびたび起きてきた。日本は島には住民はいないものの、巡視船がほぼ常駐し、いわゆる「実効支配」の状態にしていたわけだが、これまでは、漁船をだ捕しても、魚を捨てさせ、領海から追い出す程度で留めてきた。
 それが、菅内閣が6月に決定した外交方針の中で、「日中間に領土問題は存在せず」の立場を採ることにし、さらに、今回は、ビデオが公開されるまでは真偽に一抹の疑問はあるものの、中国側漁船が巡視船に体当たりをしてきた、「公務執行妨害」で船長を逮捕拘留したわけである。
 今まで通り、領海外に追い出すだけだったら、この問題は新聞記事にすらならなかったはずである。

 さて、途中経過は飛ばして、結局、「沖縄地検が最高検まで相談した挙句、独自の判断で処分保留として釈放」という結果になったわけである。
 この間の中国側の、かなり異常な強硬姿勢の背景には、実は別の問題があるとも言われているが、それは観測にしか過ぎない(ちなみに別の問題とは、現在の胡錦濤・温家宝体制に対して、保守強硬派の権力闘争があり、その突き上げで、国内向けポーズとして、対日強硬論を採った、という説である。)。 実際にどんな事情での対日強硬策かは明確にはなっていないが、まぁ、今後1ヵ月ほどの間に、徐々に関係修復の方向になるであろうとは思う。昨日の一部報道では、既にレア・アース(希土類。レア・メタルとは違う)の通関手続きの停止は、部分的に解除されたと言う。

 臨時国会の終盤までには、問題は解決しているであろう。双方、振り上げたこぶしの落とし所を探る展開になるだろう。

 ただである。同じことを今後も繰り返さないためには、日本は、「日中間に領土問題は存在しない」、っと言う姿勢を改めるべきであると私は考える。
 日本が抱える領土問題は、韓国との間の竹島領有権問題と、北方領土の、俗に北方四島と言われる島や、千島列島全体に関しての領有権についての、ロシアとの関係である。

 現在の日本が中国に対して採っている姿勢は、ロシアが北方四島に対してとっている姿勢と似ている。  日本も国益を考えてのこととはいえ、「領土問題は存在しない」立場のロシアに対して、ずっと返還要求をしている。厳密には、尖閣諸島は固有の領土と言う主張であり、北方四島の方は、第二次世界大戦で現在のロシアが領有することになった千島列島には北方四島は含まれない、っと言う、地理的には無茶な主張が日本の自民党が長く採ってきた言い分である。

 さて、尖閣諸島に話を戻すと、今実際、中国は(他に台湾や香港も)尖閣諸島の領有権を主張し、沖合のガス田開発も独断先行の形で、既に採掘基地を建設している。
 日本も北方四島の領有権を主張しているが、ロシアの実効支配力が強く、手出しはできないものの、たびたび日本のカニ漁船などの越境操業が問題になり、ロシアの警備艇に拿捕や銃撃を受け、数年前には死者も出ている。

 「領土問題は存在しない」という立場を採り続けると、いつまで経っても、領有権問題は決着せず、その間中国は、着々とガス田開発を進めようとしている。しかし、領土をめぐって戦争をするような時代では無いのはもはや明確で(主戦論者は、まず自らが自衛隊に入隊してから発言せよ。)、問題を解決するには、何歩か譲って、「日中間に、協議すべきことがある」として、まず交渉のテーブルに着くことが最も重要であろう。

 この「何歩か譲って」と言うのが我慢ならない、っという向きもおられるだろうが、それではずっと問題は発生し続け、最悪の場合、実効支配の事実を覆される可能性すらある。互いに「何歩か譲った」後、歩み寄れる点を探すのが「大人の外交」と言うものだろう。

 それにつけても、政策では無く、降ってわいた事件を国会の争点にすると叫ぶ自民党やみんなの党、そして極右の馬鹿どもの、政策立案力の欠如は、もはや目を覆いたくなるほどである。ましてや、一見世論の支持があるかに見える強硬論や検察の手続き論に拘泥しての主張は、長年この問題を放置してきた政権党だった自民党が主張するべきことではない。

 与党は、自民党との違いを見せるためにも、「大人の外交」を展開してもらいたい。
 また、強硬論が大勢に見える世論だが、実際にはそれほど関心が高いわけではない。マスコミでは大きく連日報道が続いているが、毎日新聞の携帯ニュースサイト「毎日.JP」での、アクセスランキングでは、この件に関する記事は、あまり読まれていないことがわかる。聞かれれば、反中感情を述べる人も、普段は尖閣諸島のことなど頭にないわけで、関心が薄れるのも早いはずだ。 ネット上での強硬論を主張している人の多くは、それ以前から、対中強硬論を唱える、いわゆる「ネット右翼」や、最近はやりの「レイシスト」達にすぎない。つまり、票には結び付かない。
 自民党はかつて、ネットにおける麻生の人気を、「コクミンテキニンキ」と勘違いして麻生太郎を首相に据え、結局政権を失った。ネットで声が大きい人間=国民世論では無いことに留意すべきである。最近の「小沢待望論」も同じような結果に終わった。

 今日はここまで。今後何か重大な変化があれば、また記事にするかもしれないが、私にとってこの事件は、もはや終わった事件で、後は冷却期間を置いての関係修復にどのくらいかかるか、程度が関心事である。

 ちなみに私は、18世紀の時代遅れの考え方である「地政学」的に見れば、尖閣諸島は中国領だと思うし、中国と言う国の(中華人民共和国では無い)歴史の古さからすると、尖閣諸島は中国領であってもおかしくは無い。今は日本が実効支配していると言うのに過ぎない。ならば、中国が陸軍を上陸させ、無理やり常駐させて実効支配を始めることを海上保安庁は防げるのか?それともそうなったら、本当に「日中開戦」で、アメリカも参戦して、「第2次太平洋戦争」を起こすことが望ましいのか?

 戦争をするのは格好の良いことでは無く、損失しか無い。中国はかつて、自国に従わなかったベトナムに「懲罰」と言う、高みからの目線で(「中華思想」の表われ)攻め込んだが、ベトナム戦争で実戦慣れしたベトナム軍の前に、国境の山岳地帯を抜けずに、敗退(この言葉は使っていないが)したことがある。
 尖閣諸島問題も、軍が(特に中国の軍部は、中央とは別に独断で動く場合がある)動く前に、問題の存在を認めて、話し合いで前向きの解決を目指すべきであろう。

PS.ついこの前まで、「反日ミンスは、中国に日本を献上!」とわめいていた、ネトウヨどもは今どうしているのだろう?ぜひ、竹やり特攻なりして、東シナ海の海の藻屑と消えてもらいたいものだ。

(追記:この記事をアップしたのは、今朝早くだが、今日の午後のニュースで、さっそく中国が関係修復の動きとのこと。 http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2010092900435 参照)        私の予想通りとのことか。
posted by ジャッカル at 06:56| Comment(0) | TrackBack(5) | 政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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