2010年11月04日

アメリカ民主党、中間選挙で大敗>「ティーパーティー」の薄気味悪さ。

 しばらく更新をしなかったが、何も考えていなかったわけではない。だが、特に記事を書く食指が動かなかったのは事実である。
 その中で、昨日結果が報道された、アメリカの中間選挙の結果と、その中で耳目を集めた、「保守系市民運動」とやらの「ティーパーティー運動」について、簡単に感想を書いてみたい。

 現地時間11月2日に行われた、アメリカの上下両院の中間選挙で、オバマ大統領与党である、アメリカ民主党が、特に下院で大敗を喫し、過半数をアメリカ共和党に奪われた。
 アメリカの2大政党は、時に所属議員が造反もするし、他方、政策に大きな違いはなく、2大政党制の弊害=他に選択肢が無い。っという悪しき状況になっているといえると思う。

 そうは言っても、ごりごりの宗教右翼・保守の支持を受ける共和党と、同性愛や中絶、遺伝子科学に容認的な民主党という違いはあり、民主党のほうがややリベラルであると言える。オバマ大統領は国民皆保険を目指すなど、過去歴代の民主党大統領の中でも、リベラルの度合いが強い。

 しかし、たとえば、レーガン大統領の時代、「リベラル」を、「社会主義」と誤って認識する風潮があり、それが今回も大きな争点となったようである。
 アメリカにおいては、マルクスの「資本論」が禁書であるように、共産主義・社会主義にアレルギーがあり、リベラルを「社会主義」というのは、理屈ではなく、民主党の政策へのアレルギーを持つ、保守の言いがかりに過ぎない。

 特に今回気になったのは、「ティーパーティー」という「市民運動」と名乗る、わけのわからない集団の活動であった。保守系市民運動、と称するが、昨日のニュースで見てみても、その集会には白人しかいない。白人でもイタリアーノやヒスパニックも見受けられず、かつてアメリカの支配層であったといわれる、「WASP」(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント、の意)と呼ばれる人々と重なると思って間違いないだろう。彼らの主張は、具体的な政策は少なく、ひたすら小さな政府を求め、国民皆保険や、金融機関救済などに国費を投じるオバマ政権を非難しているだけに過ぎない。
 いわば、195,60年代の「古きよきアメリカ」への回帰を目指す、復古主義的保守運動といえよう。

 選挙中の市民へのインタビューで印象に残ったのが、ティーパーティーに参加する白人の中間層の男性の言い分で、いわく、オバマの保険改革は、貧乏人に税金で医療を受けさせるもので、そんなことをしたら、税金を払い、なおかつ民間保険会社の医療保険に入っている自分が損をする。っという物であった。
 日本で見られるような、やっかみとか、自己責任論では無く、純粋に自分の損得のみで考えるあたり、個人主義が日本より強いといわれるアメリカ人のひとつの思考様式であろう。リバタリアン的、っとも言えるかも知れない。

 本来「ティーパーティー」とは、歴史上、アメリカ独立運動の象徴的事件となった、「ボストン茶会事件」という民衆蜂起をその謂れとする。
 しかし、自由と民主主義、そして平等を謳った、独立運動の趣旨とは異なり、今回の「ティーパーティー」は保守の中でも強硬派、原理主義的勢力の活動であったらしい。証拠は何も無いが、「ティーパーティー」の支持を受けた議員たちが、国民皆保険の廃止を叫んでいるあたり、生命保険会社のロビイストによる支援もあったのではないかと邪推する。

 結果、アメリカ民主党は下院で歴史的大敗を喫し、過半数を共和党に明け渡した。上院はかろうじて民主党が過半数を維持したが、一時は院内総務が落選の危機にさらされるという事態であった。

 アメリカでは、1960年代の「公民権運動」の成果で、公の場で人種・性別などの差別を行うことは犯罪とされている。しかし、実際には上記の白人の姿しか見られない保守系勢力の集会のように、人種差別は今でも公然と存在する。「ティーパーティー」参加者に、単に黒人のオバマへの反感だけで参加している者もいるであろうことは容易に想像がつく。

 今回の選挙で、オバマ与党民主党の敗因は、長引く経済不況と、国民皆保険への取り組みによる大規模な財政支出による財政赤字の拡大が上げられている。
 しかし、はたから見ているものには良くわかるが、今のアメリカの不況は、経済無策で戦争ばかりしていたブッシュ前大統領の悪政のつけであることは明白である。もはやアメリカの国内産業は軍需産業以外壊滅しているすら言われている。

 それなのに、その経済失政の責任をオバマに転嫁し、かえって国民皆保険という、日本では当たり前になっている制度を逆戻りさせようという、WASPによる「市民運動」とは、単に保守による反動に過ぎないと思う。
 経済が困窮すると、レイシズムがのさばるのは、20年前のドイツ、最近の日本の在特会などを見てもよくあることで、要は現状が悪いのは誰かの所為(その「誰か」は自分たち以外。そこに人種が絡むのがアメリカ)と言って、罵るだけなのが、劣悪な保守の傾向であろう。本来のボストン・ティーパーティーとはまるで性格が違う。

 しかし、アメリカ人は今回決断を下してしまった。まぁ、アメリカでは大統領の権限が絶大なので、これですぐさま何かが変わると言う事はあまり無いと思うが、オバマ政権にとって政策の幅が限定され、困難な国政運営を強いられることとなろう。

 だが、レイシズム(人種差別)が根底にある運動などに、未来を作ることはできないと私は考えている。 既に膨大な白人以外の人々を擁するアメリカという国家で、既得権益保持者のWASPらの活動が今回は成功したが、現在のアメリカの不況などは、彼らではどうすることもできず、やがてまた揺り戻しが起こるであろうとは想像できる。

 しかし、いつもアメリカの保守派、特に宗教右翼の報道があると、よくしゃべるのが年配の白人女性である。今回もそうだったし、前回の大統領選挙の副大統領候補で、無知のあまり世界に恥をさらした、サラ・ペイリンあたりが、ティーパーティーの主要論客であったりするなど、保守・宗教右派強硬派には女性が多いのかとも思う。サラ・ペイリンは、宗教右派の絶大な支持を集めている。

 彼女らは、たぶん自分では、敬虔なクリスチャンだと思っているのであろうが、宗教学を趣味とする私から見れば、アメリカにまともなキリスト教などわずかしか無い、と言っても過言ではない。天国にいけるのは白人だけ、とか、アメリカ人だけ、などという「アングロ(アメリカン)・イスラエリズム」などという運動まであるのである。
 そのような劣悪な人種差別に根ざした、非進歩的な思考に固着した人々に、新しい時代は築けないであろう。

 今後、アメリカ共和党が何をやらかすか。たぶん、保険制度の後戻りと、オバマが撤退期限を明確にしたアフガニスタン戦争の継続を叫ぶであろうことが予測される。しかし、それを行っても、一部軍事産業以外、誰の利益にもならないことは明白である。
 とばっちりで、日本にアフガン派兵要請が来る可能性は無いわけではないが、民主党政権のうちは、まだそういうことはあるまい。だが、アフガン戦争が継続され、次の大統領が保守派になった場合、どうなるかは予断が許さない。

 それにしても、繰り返しになるが、白人の女性ばかりが集まった、「ティーパーティー」の集会というのは異様な光景に見えた。これが婦人の地位向上の運動ならともかく、ごりごりの保守反動なのであるから、アメリカの右派の異常さには、相変わらず頭が痛い。

 数年前に、アメリカの「プロテスタント」の異常性。ヨーロッパのプロテスタントとも明らかに違う宗教右派について分析した一文を書いたことがある。その時点では、まだあまりアメリカ宗教右派のことが話題になっていなかったが、その後、聖書根本主義、さらにはキリスト教原理主義という言葉も生まれ、アメリカにおける宗教右派の異常性は、年を追うごとにひどくなっているようである。
 そのような連中には絶対に明るい未来を作ることができないのを確信するし、それらが力を持つアメリカが、この中間選挙後、良い方向に向かうとも思えない。ありうるのは保護主義の台頭と戦争経済の維持であろうか?
 世界唯一の超大国のアメリカがこれでは、世界の未来も明るいとはいえないであろう。

 以上、まったくの私見である。

(追記:上記の文を書いた後、内容の検証のため、ネットサーフしていたら、私よりも端的に、ティーパーティーの実情を書いたニュースコラムがあったので、ご紹介しておく。ぜひ、ご一読願いたい。
 http://www.newsweekjapan.jp/stories/us/2010/11/post-1769.php )
posted by ジャッカル at 01:49| Comment(0) | TrackBack(4) | 政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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